
Introduction
多良川について
1948年創業、宮古島に本社を置く泡盛酒造メーカー。島の地下水と伝統製法を生かした酒造りを行い、代表銘柄「琉球王朝」をはじめ、長期熟成古酒まで幅広く展開。安定した売上規模を持ち、近年はラムやジンなどスピリッツ製造も手掛ける。



feature article
お施主様の声
宮古島の水と風土を生かした酒づくり
沖縄本島から南西へ310km、強い日差しと海風、そして温暖な気候。珊瑚礁が隆起して生まれた宮古島は、河川がなく、雨水が長い時間をかけて地中に浸透し、澄んだ地下水として島を潤す土地です。
この、マグネシウムなどのミネラルが多いという島特有の自然条件が、泡盛づくりに欠かせない環境を形づくってきました。
そんな宮古島で島の水とともに酒造りを続けてきた株式会社多良川。
敷地内には洞窟があり、泡盛を甕で熟成した古酒(クース)が並びます。創業以来、泡盛一筋の会社が、近年、ラム酒の製造に乗り出しました。老舗メーカーが挑む、次なる一歩。
新工場について、代表取役社長 砂川 拓也様にお話を伺います。

泡盛だけではなく、ラム酒もつくっているんですね-
「現在、売上の9割以上は泡盛ですが、2018年から泡盛の設備を活用して、ラムやジンの製造を始めました。日本のラムはまだ生産量が少なく、クラフトラムとして注目されているメーカーは多くありません。だからこそ可能性を感じました。 これまでは泡盛の設備である単式蒸留器を使ってラムをつくっていましたが、本格的に展開するため、ラム専用の設備を整えたいという思いがあり、新工場建設を決意しました」。
非常にお洒落な工場です-
「複式蒸留器を導入し、2000リットルのタンクを4台設置していて、旧工場と比べると生産量は4倍になる予定です。また、ただ製造するだけの工場ではなく、来訪された方に楽しんでいただける場にもしたいと考えました。 実際に見学した、富山県のクラフトウイスキーをつくる日本酒メーカーの蔵から着想を得て"魅せる工場"を目指しています」。

島ならではに配慮したオーダーメイド
建築を担当したのは、地元・宮古島で数多くの実績を持つ佐平建設株式会社です。新工場の計画では、信頼関係のある佐平建設からの提案により、大空間を確保しながら短工期にも対応できる「yess建築」を採用。
補助金事業のスケジュールにも対応しやすいことが決め手の一つとなりました。
設計では、多良川の酒造りへのこだわりと、宮古島ならではの厳しい自然環境に配慮。潮風による塩害を考慮したガルバリウム鋼板や、台風対策として窓には雨戸・面格子を設置しました。
さらに、蒸留工程で室温が50度近くまで上がるラム酒製造室には、大型ルーフファンと、大開口ながら素早い開け閉めができるハンガードアを設置。効率的な換気と熱の排出、虫の侵入抑制を実現しています。
佐平建設の下地様は、「社長の酒造りへのこだわりを形にしながら、宮古島の気候や建物に求められる機能性を一つひとつ丁寧に反映しました」と話します。酒造りを支える機能性と、美しく魅せるデザインを兼ね備えた新工場です。

写真左:株式会社佐平建設 建築工事部 参事 下地 猛 様
つくるだけでなく、伝える。
宮古島ラムの魅力をこの場所から世界へ
泡盛やラムをつくるだけでなく、その魅力を伝える場所として構想された新工場。
会議スペースから製造風景を見渡せる設計に加え、その隣には試飲バー、さらに秘密の扉で仕切られたシアタールームも設置され、砂川社長のこだわりとおもてなしの心が随所に込められています。
酒造所が建つこの場所は、古くから湧き水に恵まれ「パルガー」と呼ばれていました。その呼び名が変化し、「タラガー」、そして現在の「多良川」になったと言われています。
この伏流水は今も仕込み水として使われており、酒造りの原点そのもの。伝統ある泡盛づくりを大切にしながら、その技術を活かして新たなラムづくりにも挑戦しています。
「宮古島といえばラム、と認知される発信基地を目指しています」と、未来を見据えたまっすぐな眼差しで語ってくださいました。

株式会社佐平建設
建築工事部 参事
下地 猛 様
砂川社長のこだわりを形にするため、酒造りに必要な機能と宮古島特有の気候条件を両立できる建物を目指しました。yess建築の補助金活用に対応できる工期の短さに加え、離島の強風や塩害に対応できる仕様も評価いただきました。
編集後記
取材では、砂川社長に敷地内をご案内いただきました。大きなガジュマルの木に迎えられ、古酒が眠る洞窟では入口に大きな蛇の姿も。宮古島の自然や文化、そして酒造りが深く結びついていることを、五感で感じる時間となりました。