
Introduction
堅展実業について
1964年創業。食品原材料および酒類の輸出入を手がける堅展実業株式会社。本社は東京都千代田区に構える。 二代目社長・樋田恵一氏のもと、ウイスキー事業を本格化。2016年、北海道厚岸町に厚岸蒸溜所を設立し、蒸溜事業および製造業を開始した。伝統的な製法を大切にしながら、基本に忠実なウイスキー造りに取り組んでいる。



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お施主様の声
唯一無二の“ジャパニーズアイラ”を醸す
― 厚岸蒸溜所
2016年の蒸溜開始からわずか数年で、国内外から注目を集める新進気鋭のディスティラリー「厚岸蒸溜所」。麦芽・水・酵母・ピート・樽に至るまで、可能な限り厚岸産にこだわり、土地の個性を映した原酒づくりを目指しています。
敷地内には、蒸溜所としての機能性と品質管理を徹底するための独自設計の施設とを有し、2021年には、ウイスキー蒸溜所として国内初となるHACCP認証を取得。製造環境にも強いこだわりを持つ建物です。
北海道・厚岸の風土を映し出す、唯一無二の“ジャパニーズアイラ”。その原酒を生み出す厚岸蒸溜所で、蒸溜所所長 兼 チーフブレンダーの立崎勝幸様にお話を伺いました。

なぜ、厚岸でウイスキーづくりをされているのか―
「社長の樋田が、ウイスキーの聖地・スコットランドのアイラ島のウイスキーの大ファンだったことがきっかけです。日本流のアイラモルトを造るために土地を探し、たどり着いたのが北海道・厚岸でした。」
湿原に囲まれ、霧に覆われた幻想的な港町。ピート層を通った水が流れる川、牡蠣が育つ豊かな海。冷涼で湿潤な気候風土は、アイラ島と非常によく似ているといいます。
そんな厚岸の地で、スコットランドの伝統的な製法を受け継ぎながら、日本人ならではのものづくり精神を生かし、丁寧なウイスキーづくりを行っています。
冬場にはマイナス20度まで冷え込むこともありますが、この大きな寒暖差が、ウイスキーの味わいをよりまろやかにするといいます。
なかでも、「立春」「立夏」「冬至」など、日本の季節を表す言葉を冠し、季節ごとに発売される「二十四節気シリーズ」は全国的な人気を誇り、入手困難なウイスキーとして知られています。

熟成庫・充填棟・精麦棟など計5棟を
「yess建築」で建設
「最初にyess建築を採用して建てたのは熟成庫です。社長がホームページで見つけたのがきっかけでした。地元の葵建設さんにつないでいただき、そこからお付き合いが始まりました。」建物を建てるうえで、最も重視したのは内部レイアウトの自由度。
「中間柱がないことで大空間を確保でき、建物内のレイアウトが非常にしやすかったですね。」
蒸溜所内には、本場スコットランドの名門・フォーサイス社製の蒸留設備「ポットスチル」や「マッシュタン」などが並びます。その光景は、外から眺めているだけでも心が躍ります。
「近年は、大きな窓を設け、内部の作業風景を見せる“魅せる蒸溜所”が主流になっています。yess建築でも対応できると聞いているので、今後も相談しながら進めていきたいですね。」

写真は充填棟
厚岸でつくる、ではなく
厚岸と“共につくる”ウイスキー
ウイスキーづくりが風土の影響を大きく受けることは言うまでもありませんが、麦芽や樽材に至るまで、すべて地元産を追求する姿勢は極めて稀です。
厚岸蒸溜所が目指す“オール北海道”のウイスキーづくりは、今後さらに加速していきそうです。また、熟成庫での作業を通じて得たノウハウを生かし、富良野地区での新たな蒸溜所建設計画も進行中。
「厚岸と富良野、それぞれの熟成環境の違いを体感してもらうことで、これからのウイスキーへの期待感を高めていきたいと考えています。」
ウイスキーへの情熱を持ち続けながら、地域ごとの味わいを伝える。その姿勢を貫き、進化し続ける厚岸蒸溜所の今後の展開に、ぜひ注目してほしい——。そう力強く語ってくださいました。

編集後記
「子どもと同じで、お酒も育つ環境によって性格が変わってくる。」取材中、ふとこぼれたこの一言が、強く印象に残りました。 とりわけ二十四節気シリーズは、まるで一つのクラスのように、個性豊かなウイスキーがそろっています。 「中には、少しやんちゃな子もいるかもしれない。でも、憎めないんですよ。」そう語る立崎様の表情に、ウイスキー一つひとつへの深い愛情を感じ、胸が熱くなりました。